名鉄犬山線で、本を開く。
事務局長・行政書士の大坂です。
私は、通勤に名鉄犬山線を利用しています。
朝の通勤電車を見回してみると、半数以上の人がスマートフォンを使用し、そのほかには勉強している学生さん、目をつぶっている人などなど。紙媒体の本を読んでいる人は、1割くらい、もしかしたらそれ以下かもしれません。昔はもっと本や新聞を読んでいる人が多かったように思います。
ただ、本当は本を読みたい気持ちがあるけれど、仕事が忙しくて本が読めない、疲れてスマホばかりみてしまう・・・そんな方も多いのではないでしょうか。
文芸評論家三宅香帆さんの「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読みました。この本は、2025年の新書大賞です。彼女の本は、どの本も売れていて、どこの書店も平積みされていたり、目立つところに置いてあることが多いです。
明治時代から高度成長長期までは、読書をして社会に関する知識を得ることが成功に直結すると考えられていたため、長時間労働の中でも「読書」が行われていました。
しかし今は効率が重視され、余分なものを排除して自分が必要な「情報」だけをスマホで収集することで隙間時間が埋められます。その結果、余分な情報(ノイズ)が多くて読むのに時間のかかる「読書」が敬遠されがちになっています。
自分の考えを深め、生活を豊かにするためには、余分な情報(ノイズ)が多い「読書」に触れることが必要のように思います。本を読むことにより、自分が意図しない情報や視点が入り、そこから考えが広がります。
本が読めない理由は、忙しさだけでなく、現代社会の働き方にも深く結びついていて、全身仕事にのめり込む「全身社会」ではなく、仕事と個人の時間をバランスよく保つ「半身社会」へとシフトしよう、というのが、筆者の視点です。
「半身社会」になって余暇の時間が確保できると、本を読む、芸術に触れるというさまざまな文化活動の機会が増えます。文化活動は、心に余裕や安らぎをもたらし、ストレス解消・メンタルヘルスの向上につながります。また、文化活動は、他者の多様な価値観を理解し受容する姿勢を育む機会にもなります。
今世界的に広がっている様々なヘイトや分断は、心の余裕のなさやストレスなどから、考えや立場が異なる他者へ殊更攻撃を加えたくなってしまう、という心理的状況にも一因があると思います。中には、過去の歴史や宗教を起因とする複雑なものがあり、簡単に改善されるものではないと思いますが、「半身社会」が実現して、社会が前向きに変わっていくことを願いたいです。
「本が読めない!」と嘆くだけではなく、働き方や時間の使い方を見直すヒントが詰まった一冊でした。仕事と読書の両立を目指す方におすすめです。
事務局長・行政書士 大坂
