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週末畑計画~高齢化に伴う空き家問題の解決を想像する~

 5月中旬は夏野菜の定植ラストスパートだそうです。

 引っ越しを機に念願の家庭菜園を始めた私事務員Nですが、3年目のこの春、さらに農地をお借りすることにしました。家庭菜園は、数年放置されていた庭を手探りで開墾するところからのスタートでした。仕事、家事育児のかたわら、朝夕のスキマ時間や週末に、様々な作業の得手不得手を少しずつ自覚したり、肥料による味の違いを知ったりするうちに、土作りや農具の使い方などの知識と知恵を授けて下さる畑の師匠に出会い、今までの些細な疑問の答え合わせ的な作業ができるようになりました。そして、交流を続ける中で地主さんを紹介いただき、ついに畑をお借りすることになったのです。手掛ける面積もやることも、顔見知りの先達の範囲も一気に広がるに至っています。
 近親者に農業従事者を持たない私ですが、食べたい野菜を収穫するための逆算スケジュールを立てることから一つずつ歩みを進め、いずれは週末の畑作業だけで野菜を自給できるようになりたいと思っています。私の周りにはカジュアルな農業希望者が多いようで、既婚未婚、子供の有無に関係なく、楽しみつつ真剣に季節の野菜を育てています。

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 さて、私の住まいは新興住宅地にあり、景観を重視したまちづくりが定着しています。ご近所の方々をはじめ自治会の活動内容からも意識の高さをひしひしと感じるエリアです。しかしながら、全国各地で起きているのと同様に、住民の高齢化とそれにまつわる問題は年々深刻化しているようです。これらは、近い将来自分達が解決していかなければならない事柄ですから、少しでも早い内に関わり始めた方がスムーズなのかなと思っています。とはいえ、どう関わっていくのが良いのでしょうか。今年度はじめて自治会の役が回ってきた影響もあり、色々と想像を巡らす機会が増えています。今、最高に畑が楽しい私は、次の仮説を立ててみました。


 もし相続した(する予定の)家を活用しないなら、早めに更地にする。公的補助金制度が使えるかもしれません。
 更地にしてからある程度の期間で買い手がつかなれば、畑で使って良いとして貸し出す。地域によっては、自治会が借り上げる方がわかりやすいかもしれません。余談ですが、自治会は「地縁団体」として法人化できます。
 ご近所さんにとっては、自宅の徒歩圏内に畑が借りられるようになる。今まで交通手段がなくて二の足を踏んでいた人もアクセスできるようになり、地域の畑率が高くなると共に、利便性を保ちながら畑をしたいと考える層が転居してくるようになる。
 運動不足・野菜不足・地縁不足解消の循環が始まる…ここまでうまく運べばラッキーな展開です。実際には、肥料の管理や農薬散布の有無など様々な事情が絡んできますので、その都度調整を繰り返すことになるでしょう。かつての日本にあった(と想像しますが)地域コミュニティの現代版を築くことが、今自分が想像していることなのかなと考えたりもします。
 高齢化に関しては、別居の親が施設に入所した場合の草刈りと刈草処分や、自治会費負担の話も、空き家と同じくらい切実な問題です。今は親族がお金を掛けて手配するケースが多いでしょう。これに関しても、畑を介して解消できるかもしれません。たとえば、雑草から堆肥を作ったり、刈草の発酵熱を利用した小規模発電といった取り組みは、以前から全国各地で行われています。更地にした土地は石だらけだったり全面的に地下茎が広がっていたりして、野菜を作るには土が足りないことが考えられますが、雑草堆肥で解消できるかもしれないのです。また、こういう取り組みの一つ一つは各家庭だったり、子供会や学校の教材にもなるでしょう。草刈りしてもらい刈草は堆肥の原料に提供する一方で、自治会に加入し続けるという仕組みを作ることができるかもしれません。

 先日、畑の師匠から、畑に隣接する里山は少なくとも数年ごとに間伐した方が良いものの、肝心の所有者が分からないという話を聞きました。業界的に「所有者不明森林」と言ってしまえば味気ないものですが、伐採の対象の木はミズナラやコナラ、竹各種ということで、加工可能な樹種です。竹は言わずと知れたタケノコが採れますし、コナラは椎茸の原木として知られます。いずれも家具屋さん、ギャラリーや催事など加工品としてお目に掛かることもあります。自分のスキル次第で、畑で使う簡易小屋や自宅の収納などに加工して使う途が広がっているのですよね。


 家庭菜園を切り口に、手仕事の楽しさと共に次世代を築くことの責任を感じるようになりました。目の前のものを重荷とするか資源と捉えるかは自由ですが、その価値判断には相応の責任が伴います。何事も「活きる」、「活かす」工夫に頭と体を使う暮らしを続けたいと思っています。

事務員N
 

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