親権とは・・・はて?
離婚後の選択的共同親権を規定した民法改正法案が国会の衆参両議院で可決され、2026年には施行されることになりました。
現行法においては、未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、父母のいずれか一方を親権者と定めることになっていますが、今回の改正により、父母の一方だけでなく、双方を親権者とすることも選択肢となります。
共同親権の導入により、離婚時の親権をめぐる争いの激化を避けられるとして歓迎する見方もありますが、親権を「親の権利」として捉える限り、共同親権となれば権利と権利のぶつかり合いが起きるのは必然であり、夫婦の争いは形を変えて離婚後も存続し続けることになります。
親権とは、子を監護・教育したり、子の財産を管理したりする親の権利・義務の総称であるなどと定義されますが、残念ながら、「親権」という言葉を文字通り読めば「親の権利」ということになり、「義務」としての側面を読み取ることができません。
そもそも「親権」という言葉は明治民法から使用されており、立法者の意図はともかく、封建的な家制度における戸主たる父親の子供に対する支配権的な意味合いで一般に理解されていたものと思われます。
このような「親権」という言葉を、時代が変わっても今日に至るまでそのまま使い続けているため、未だに、親権が親の子どもに対する支配権であるかのように理解している人が少なくないように思われます。
未成年の子どもがいる夫婦が離婚する際、本来、真っ先に話し合うべきことは、離婚後、子供に対する親の責任を具体的にどのように果たしていくかということであるはずです。
そうであるのにもかかわらず、実際、離婚にあたって問題になるのは、誰が親権者になるか、ということであり、親権の中身である親の義務を具体的にどのように果たしていくかということはほとんど話し合われることなく離婚が成立しています。
今回の改正では、残念ながら「親権」という言葉がそのまま使われていますので、これを直ちに変更することはできませんが、せめて「親権」の中身は権利ではなく「義務」であるという意識を社会に浸透させていくことが必要だと思っています。
ちなみに、今回の改正についての上記の説明において、「親権」という言葉を「親の養育義務」をと読み替えると、こんな感じになるでしょうか。
現行法においては、未成年の子供がいる夫婦が離婚する場合、夫婦のいずれか一方を「主たる養育義務者」と定めることになっていますが、今回の改正により、父母の一方だけでなく、双方を「連帯養育義務者」とすることも選択肢となります。
このような内容であれば受け入れやすいのですが・・・はて、皆様はどう思われますか?
弁護士 大池