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人ごとだった認知症が私の家族に ~資産管理のすすめ~

 2年程前のことです。

 ひとり暮らしの父の「オレオレ詐欺」被害やネットの重複注文を案じて、生活費口座以外は家族が管理することにしました。これでもう大丈夫!

 その当時の父は、身の回りのことを自分で出来て、自ら運転して週に3日スポーツジムに通っていました。

 

 それ以降、認知症がなだらかに進行している様子はありましたが、まだ大丈夫と思っていた矢先、事件が起きました。

 今年の正月2日、夕方に自転車で買い物に出た父は、夜になっても帰って来ませんでした。翌朝早く、道で倒れていたところを発見され救急搬送されたのです。肋骨6本の骨折がありそのまま入院。ひき逃げ事故の被害に遭った可能性も指摘されました。搬送された病院で、自宅の電話番号を伝えることが出来たお陰で家族に繋がりました。

 父の認知症は入院を境に急に進行し、看護士さんにお世話をかけることが多くなり、半月後には担当医から「もう、ひとりで暮らすのは無理でしょう。」と言われ、認知症の専門病院に転院することとなりました。

 

 さて、ひとり暮らしの父の生活ぶりについて、家族の誰も把握していません。コロナ対策のため面会が制限されていましたので、入院中の父に聞くことも出来ません。いえ、聞いても分からなかったかも…(^^;) すべて手探りです。役所への届出、家の維持管理のこと、車の売却、カードの解約など数多の手続がある中で一番大変だったのは、毎月の口座引き落としの中身の照合でした。

 電気、ガス、水道、電話、インターネット、携帯電話は見当がつきました。しかし次第に、「これは住宅の共益費」、「これは自動車保険?」、「これは、傷害保険?」、「これも保険??」、「これは??」、「これも何??」…(-_-;)

 自宅を片付け、物の下敷きになった郵便物や引き出しを掘り出し、通帳に記帳された少ない情報を元にひとつひとつ連絡先を調べていくと、保険は、クレジットカードなどに付随して勧誘されたものということが分かりました。勧められるままに結んだ家電の保証契約の解約は、なかなか手間のかかる作業でした。事前に父ともっと話をしていたら、手立てが出来ていたら、お金の無駄を省けたかもしれません。

 

 父は今も入院中です。この先、施設入所などで父の預金を動かすには、「法定成年後見人制度」の利用が必要になりそうです。今振り返ると、父が認知症になる前に、資産管理についてしっかり考えておけばよかったと思います。

 

 任意後見制度:判断力があるうちに家族(任意後見人になる人)との間で契約を結ぶ。

 

 家族信託:保有する資産を家族に託し、老後の生活・介護など費用の管理・処分を任せる。

 

 生前贈与:生前に資産を家族に贈与する。

 

 その他にも、代理人指名手続きなど色々な方法があります。

 詳しくお知りになりたい方、ご興味をお持ちの方は、当事務所へご相談下さい。

 

 

 次に父に会えたのは、転院の日以来5カ月ぶりとなる6月の初旬でした。 父は、「ぶっぶ~」と言いながら、細くなった手で車椅子を動かして現れました。穏やかな表情に安心しましたが、もう家族のことはわからなくなっていました。

 

 今朝、玄関の「南天」の実が色づいていました。昨年は、父の運転で紅葉を見に出掛けたことを思い出し、時の流れの早さを感じています。

 

 

事務員S

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