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可児川とリニア工事

 私の生地は、岐阜県の旧上之郷村です。昭和30年の町村合併の結果、御嵩町の一部になりました。その上之郷を流れる可児川のことを書こうと思います。

 

 子供のころは、夏になると木綿のパンツ一枚になって、可児川で泳ぎました。釣りをしたこともあります。最近川魚を食べることは少ないですね。精々、鮎程度です。当時は、鯉(こい)、鮒(ふな)、鯰(なまず)その他名前も知らない色々な魚を捕ったり、時には、もらっていたと思います。母や親戚の伯母が煮たり焼いたりしたものを食べた記憶があります。泥鰌(どじょう)は、田んぼにいくらでも泳いでいましたので、透明な流水の底を泳ぐ姿が眼に浮かびます。母が味噌汁に入れて煮たりしました。その泥鰌を骨ごと食ったものです。柳川鍋を知ったのは、大人になってからです。

 

 その可児川ですが、一時は、生活排水などや投棄ゴミで汚染されていたことがありました。また、時代とともに、子供が川で泳ぐこともなくなりました。その後、環境意識が高まり、生活排水等による汚染はなくなりました。とても良いことです。平成12年からは、下流域の可児市で、“めだかの楽校”を開催し、長年支えている方々がいます。

 

 さて、可児川の上流域である上之郷の美佐野地区では、JR東海のリニア工事から出る要対策土の処分場が計画されています。要対策土とは自然由来のヒ素などの重金属を含み、汚染対策が必要とされる土壌とのことです。JRは要対策土対策として遮水シート2枚と不織布3枚を交互に重ねて土にかぶせる案を示しているとのことです
 しばらくは、対策が実効性を持つでしょう。しかし、素人考えでも数十万立方メートルの残土が遮水シートに及ぼす力は一様ではないうえ、部分的に歪みを発生させると思います。歪み部分が劣化し、地震の影響などで破れる可能性がないとはいえません。当然のことながら、ヒ素などの重金属は、減衰しません。これら有害物質が、やがて周辺環境中に流れ出して可児川流域を汚染しないか、この点が危惧されています。

 

 先日、私は、御嵩町の中公民館で開催されたリニア残土処分場を考える会合に行ってきました。長年この問題を追っているジャーナリストの樫田秀樹氏の講演がありました。問題点は、同氏の【論文】「迷走を続けるリニア中央新幹線の残土処分」をご覧頂けるとほぼ分かります。
 樫田氏のお話を聞いて特に気になった点があります。一つは、JR東海の住民に対する説明会の持ち方です。住民からの質問数を予め限定し、再質問を受け付けないというのです。仮に、事実だとすれば、それでは議論が深まりませんので住民の理解は、得られないでしょう。次に、工事の内容を質問しても詳しく説明してくれないというのです。これも仮に事実だとすると、かえって、不信を招きます。

 

 静岡新聞のネット記事を参照すると、JR東海の環境影響評価(アセスメント)に関する文章がありました。
 以下は、その記事からの引用です。
 “アセス法に基づく住民説明会は13年10月に開かれた。「(残土管理に関する)JRの説明に具体性がなかった。『適正に処理する』と言って押し通した」と地元自治会の前会長で町の環境課長も務めた纐纈(こうけつ)久美さんは振り返る。”
 地域住民の理解を得るためには、情報の開示と納得のいく説明が必要ではないかと思います。徳川家康は、「由らしむべし、知らしむべからず」と発言したようです。しかし、封建時代の統治原理です。民主主義社会の合意形成にはマッチしません。

 

 子や孫達のことを考えると、将来とも“清流の国”岐阜県に相応しい可児川であって欲しいと念願しています。

 

弁護士 平井

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