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寄与分と遺産分割

 私ごとですが、いよいよ親の介護をする年代となりました。
 父親はまだ要介護1であり(但し、現在要介護認定の区分変更申請中です。)、1人暮らしをしていますが、周りの手助けがないと生活は成り立ちません。
 有り難いことに、私には妹がおり、私自身の負担は2分の1以下におさまっていますが、介護というものがいかに過酷なものとなり得るのかを実感しています。

 

 子育ても確かに大変ですが、将来があり、楽しさがあります(そうであるからこそ、夫婦の離婚時には親権を取り合うのです。)。
 しかし、介護は、嬉しいことも無くはないですが、認知症になったり病気がちになったりしている老人を相手にするわけですから、相当なストレスがかかります。そうすると、積極的に引き受けたいという人は少ないでしょうから、要介護の親に複数の子供がいる場合、どちらかと言えば、押し付け合いとなります。
 その結果、もしくは、自然の流れで、親の介護を子の誰かが引き受けることになることが多いのですが、この時に兄弟(姉妹)間でのコミュニケーションが不足していると、親の相続の段階で揉めることになりがちです。

 

 相続において、親の介護をどのように評価するかについては、法律上の基準があるわけではありません。
 「寄与分」という制度があることから、大丈夫ではないかと思われがちですが、そうではないので注意が必要です。
 民法904条の2の条文を見ると、寄与分が認められるためには、
 (親の介護などによって)「(親の)財産の維持又は増加について特別の寄与をした」ことが必要とされています。
 通常、親の世話というと、親の食事を準備したり、親を病院に連れて行ったり、掃除洗濯をしたり、介護保険のサービスを受ける手助けをするなどが想定されますが、費用は親のお金で賄うことが多いと思います。そうすると「(親の)財産の維持または増加について特別の寄与をした」ということにはなりにくいことから、このような通常の親の介護で「寄与分」が認められるのは難しいということになります。

 

 しかしながら、この「通常の介護」がストレスフルであることは、上で述べたとおりです。
 介護の負担を金銭的に評価することは難しいことですが、
 民法906条において、
 「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」
 とされていますので、介護の負担についても考慮したうえで、分割内容を柔軟に決めるのが法の趣旨に添うのではないかと思います。
 すなわち、「寄与分」として認められないからといって、遺産分割協議や調停においては、必ずしも法定相続分で分ける必要はなく、介護について負担が大きかった相続人についてはそれを考慮した分割内容とするのが相当ですし、審判においても、機械的に法定相続分で分割するのではなく、より柔軟な運用をすべきだと考えるのです。

 

 これから、ますます高齢化が進む中で、高齢者の介護と相続にまつわる紛争は増加の一途を辿ると予測されます。
 今後、遺産分割の調停や審判においては、適切な運用によって相続人間の実質的な公平を実現することが一層重要になってくると感じています。

弁護士 大池

 

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